
妊娠がわかったら、出産まで定期的に妊婦健診を受ける必要があります。妊婦健診は、お母さんにとってもお腹の赤ちゃんにとっても大切な検診です。
しかし、仕事などで忙しい方の中には「どれくらいの頻度で妊婦健診に行く必要があるの?」と気になっている方も多いでしょう。
このコラムでは、妊婦健診の頻度や検査内容、健診にかかる費用についても詳しく紹介します。妊婦健診について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
妊婦健診とは

妊婦健診は、赤ちゃんとお母さんの健康状態をチェックするために行われる定期健診です。妊婦健診の必要性や、いつ受診する必要があるのかについて詳しく説明します。
妊婦健診の必要性と目的
妊婦健診では、胎児の発達が順調かどうかはもちろん、お母さんの健康状態に問題がないかどうかのチェックも行います。お母さんの体調不良は、胎児の発達にも関わるためです。
また、妊婦健診で胎児の発達状況の遅れや病気が確認できれば、妊娠中に治療をしたり産後のNICU(新生児集中治療室)の手配をしたりすることも可能です。
妊娠した場合は必ず受けるようにしましょう。
妊婦健診はいつから受ける?
妊娠の可能性に気がついた際は、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。
市販の妊娠検査薬で陽性反応が出ていても100%妊娠しているとは言い切れないため、医師による診察を受ける必要があります。
初診が早すぎても胎嚢が確認できないケースがあるため、一般的には妊娠5週目の後半〜妊娠6週目ごろに受診するのがよいでしょう。
遅れると異所性妊娠など母体にリスクがある可能性もあるので、早めに受診しましょう。
妊婦健診の頻度

厚生労働省が発表する標準的な妊婦健診は、以下の頻度です。
期間 | 妊娠初期〜23週 | 妊娠24週〜35週 | 妊娠36週〜出産まで |
受診間隔 | 4週間に1回 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
トータルで14回ほどが目安ですが、お母さんと赤ちゃんの健康状態や病院の方針によって妊婦健診の頻度は異なります。
なお、8週目よりも早く病院を受診した場合は、胎児の様子を確認するために1〜2週に一度の受診が必要なケースも多いです。
妊婦健診でのチェック項目

妊婦健診では、毎回行う健康チェックと妊娠週数に応じた検査とがあります。毎回母子手帳を持参し、忘れずに受診しましょう。
毎回行う検査
以下の3つの検査は、基本的に毎回の妊婦健診で行う内容です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
尿検査
妊婦健診中は毎回尿検査を行います。尿検査では妊娠すると分泌されるホルモンの有無や、尿中の蛋白と糖の量を確認可能です。
尿中の蛋白が+の場合は妊娠高血圧症候群、糖が+の場合は妊娠糖尿病のリスクがあります。場合によっては食事や運動の指導をされることもあるでしょう。
体重測定
体重が急激に増えたり痩せすぎたりしていないかどうか確認します。
体重が急激に増えると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクがあり、痩せすぎている場合は胎児が順調に成長しないリスクがあります。
体重は妊婦さんの元々の体型にもよりますが、1ヶ月に1kg程度の増加を目安に考えることが多いです。
妊娠前に痩せ型の方は12〜15kg、普通体重の人は10〜13kg程度の増加を目安とします。
血圧測定
血圧が高いと、妊娠高血圧症候群の可能性があります。
最高血圧が100~130mmHg、最低血圧が60~80mmHgが標準血圧のため、これ以上の数値の場合は詳しく検査を行います。
妊婦初期・中期・後期に行う検査
血液検査は、妊娠初期・中期・後期に計3回行います。検査内容は以下の通りです。
血液検査
血液検査を行うことで、お母さんの感染症や貧血などの状態を確認します。万が一感染症にかかっている場合は、母子感染の可能性もあるため治療しなければいけません。
採血によって調べる項目の例は以下の通りです。
- 血液型
- 貧血
- 血糖
- B型肝炎抗原
- C型肝炎抗体
- HIV抗体
- 梅毒血清反応
- ALT抗体
- 風疹抗体価
- 不規則抗体など
必要に応じて行う検査
必要に応じて超音波検査を行ったり、内診を行ったりします。以下の3つの検査内容について紹介します。
超音波検査
超音波検査には、膣の内側から視る「経膣エコー」とお腹の上から経腹プローブを当てて診る「経腹エコー」との2種類があります。
妊娠12〜13週頃までは経膣エコーで子宮や卵巣の状態を観察し、それ以降は経腹エコーで赤ちゃんの位置や体の状態を観察します。
腹囲・子宮底長測定
メジャーを使って腹囲を測ったり、恥骨の中央から子宮の上の端までの距離である子宮底長を測ります。
子宮の大きさを測ることで、胎児の成長や羊水の量をチェックできます。
内診
子宮の状態や卵巣の状態をチェックするために、内診を行います。また、子宮口の硬さを調べ、流産や早産の兆候も確認可能です。
妊娠後期に行う検査
妊娠後期に行うNSTについて、見ていきましょう。
NST(ノンストレステスト)
子宮収縮の頻度や赤ちゃんの心拍を調べる検査です。主に赤ちゃんが経膣分娩に耐えられる体力があるか確認します。妊娠36週ごろから行う病院が多いです。
妊婦健診のスケジュール

妊婦週数によってどのような検査を行うのかについて、詳しく紹介します。
妊娠初期〜23週
妊娠初期から23週までは、4週間に1回の頻度での妊婦健診が推奨されています。
母体に気になる所見がある場合や多胎妊娠の場合は、11週ごろまでは週1〜3回の頻度での受診を求められる可能性もあります。この時期に行われる検査は主に以下の通りです。
- 母親の血圧・尿蛋白・貧血有無・血液型
- 胎児の発育・大きさ
- 初期血液検査
- 超音波検査
- 子宮頸がん健診
妊娠24週〜35週
妊娠24週〜35週は2週間に1回の頻度で妊婦健診を行います。この時期には早産のリスクや赤ちゃんに異常がないか調べるために、初期よりも間隔を縮めて検査をします。
24週〜35週に行われる検査は以下の通りです。
- 母親の血圧・尿蛋白・貧血有無
- 胎児の発育・大きさ
- 血液検査
- 精密超音波検査
- 貧血・血糖検査
- 腹囲・子宮底長計測など
妊娠36週〜出産まで
出産が近づくと、胎児の心臓の状態を調べるNSTを行います。里帰り出産を予定している方は、出産を予定している病院に移りましょう。
なお、スマイルレディースクリニックには分娩施設がないため、妊娠32〜34週頃の健診から、出産を予定している病院に紹介状を持ってお移りいただいています。
- 母親の血圧・尿蛋白・貧血有無
- 胎児の発育・大きさ
- NST
妊婦健診を受ける病院の選び方

妊婦健診を受ける病院は、以下のポイントを参考に選びましょう。
- 診療時間
- 自宅からの距離
- 口コミなど
妊婦さんの中には、仕事を続けながら妊婦健診を受ける人も多いです。
妊婦健診の度に仕事を休んだり遅刻したりするのが難しいという人も多いでしょう。そのため、遅い時間まで診療している病院を選ぶと安心です。
また、妊婦健診には何度も通うことになるため、できるだけ通いやすい場所を選びましょう。万が一出血など体に異変を感じたときにすぐに受診できる距離にあるのがおすすめです。
3つ目に、病院の評判も確認しておきたいポイントです。妊娠生活は不安なことやわからないことが多いため、相談しやすい雰囲気の医師がいるクリニックを選ぶとよいでしょう。
妊婦健診にかかる費用

妊婦健診は、毎回受ける基本検査のみの場合は3,000〜7,000円程度、週数ごとの特別な検査を含むと1〜2万円程度かかります。
妊婦健診の回数は14回以上になるため、トータルで10〜15万円程度かかるケースが多いです。妊娠には保険が適用されないため、検査費用は全額自己負担です。
ただし、自治体からの助成制度を使えば費用を抑えられます。割引される金額は自治体によって異なるため、お住まいの地域で確認しましょう。
妊婦健診を受けない場合のリスク

「仕事を頻繁に休めない」「妊婦健診にかかる費用を抑えたい」などといった理由で、妊婦健診を受けずに出産したいと考える人もいるかもしれません。
しかし、妊婦健診を受けないと、下記の3つのリスクがあります。
- 胎児の死亡率が上がる
- 合併症になる可能性がある
- 出産場所が見つからないリスクがある
妊婦健診を受けないことは、母体にとっても赤ちゃんにとってもリスクが大きいです。それぞれのリスクを理解し、妊婦健診を必ず受診しましょう。
胎児の死亡率が上がる
妊婦健診を受診しないことで、周産期死亡率が上がることがわかっています。周産期とは、妊娠22週から生後7日未満の時期のことです。
周産期死亡率とは、この時期に赤ちゃんが死亡してしまうことを指します。
日本の周産期死亡率は、2022年のデータでは3.3%です。一方で大阪府が発表した妊婦健診の未受診妊婦における周産期死亡率は約19.7%で、約6倍も高くなっていることがわかります。
亡くなってしまった赤ちゃんの中には、妊婦健診を受けて適切なケアをしていれば助かった例もあります。
母体と赤ちゃんの健康のために、妊婦健診は重要な役割をになっているのです。
合併症になる可能性がある
妊娠中は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症のような病気にかかりやすくなります。
妊婦健診を受けていないと早期発見ができず、症状が悪化すると赤ちゃんにもお母さんの体にも影響を及ぼす可能性があります。
出産場所が見つからないリスクがある
妊婦健診を受けないまま出産を迎える場合、病院で受け入れ拒否される可能性があります。
妊婦健診を受けない方は感染症の検査を受けていないため、万が一感染症にかかっている場合を考えて、受け入れ拒否をする病院が多いのです。
妊婦健診に関するよくある質問

最後に、妊婦健診に関するよくある質問について3つ回答します。
妊婦健診受診が遅れるとどうなる?
妊婦健診の受診が遅れると、異所性妊娠に気付けないなどのリスクがあります。
異所性妊娠とは、子宮以外の卵管などの位置に受精卵が着床してしまうことです。
異所性妊娠は胎児が育つことができず、破裂すると腹痛や出血が起こり、治療しなければ生死に関わることもあります。
妊娠の可能性に気がついた際は、できるだけ早く病院を受診しましょう。
妊婦健診で毎回体重測定するのはなぜ?
妊婦健診で体重測定を行うのは、急な体重の増加にともなう妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクを避けるためです。
反対に、体重が順調に増えない場合は赤ちゃんの発育不全の可能性が考えられます。
つわりの症状や食事が取れているかどうかを医師が把握するためにも、体重測定は必要な項目なのです。
妊婦健診にはどれくらいの時間がかかる?
妊婦健診には、待ち時間も含めて1〜2時間程度かかる人が多いです。
しかし、病院の大きさや予約の有無など、その日の検査内容などによってかかる時間は異なるため、時間に余裕を持って受診するとよいでしょう。
まとめ
妊婦健診は、週数によって頻度が異なりますが、1〜4週間に1度のペースで受診が必要です。
妊婦健診を受けることにより母体や赤ちゃんの健康状態をチェックし、異常を見つけられるため、必ず受診しましょう。
スマイルレディースクリニックでは、34週ごろまでの妊婦健診を行っています。平日の診療時間は19時半までと仕事帰りにも受診しやすく、パートナーの方とも受診がしやすいです。
分娩のために近隣の病院の紹介や里帰り出産への対応も行っておりますので、ぜひお気軽にお越しください。