
妊娠が確定したら、出産までの期間に妊婦健診を受ける必要があります。妊婦健診は、安心して出産を行うために必要な健診のため、必ず受けなければいけません。
しかし、これから妊婦健診を受ける人の中には、事前にどんな内容の検査を行うのか知りたいという人も多いでしょう。
この記事では、妊婦健診の内容やスケジュール、健診にかかる費用などについても詳しく紹介しています。
初めての妊娠で不安な方や、妊婦健診の内容を知って心構えをしておきたい方などは、ぜひ最後までお読みください。
妊婦健診とは

妊婦健診は、妊娠した女性が出産までに受ける健診のことです。ここでは、妊婦健診をなぜ受けなければいけないのか、受けないとどうなるのかについて説明していきます。
妊婦健診の必要性
妊婦健診とは、お母さんとお腹の中の赤ちゃんの健康状態を定期的に確認する検査のことです。母体に異常がないか、胎児は順調に育っているかなどを様々な検査で調べます。
また、医師や助産師に妊娠中や出産後の生活などについても相談できるため、定期的に受診することで安心して妊娠生活を送れるようになります。
妊婦健診を受けないとどうなるのか
妊婦健診を受けない場合、以下の3つのリスクがあります。
- 胎児の死亡率が上がる
- 合併症になる可能性がある
- 出産場所が見つからないケースがある
妊婦健診では母親と赤ちゃんの健康状態をチェックしているため、もしも出産にリスクがあったり病気があったりした場合は、産前から治療が受けられます。
妊婦健診を受けない場合、病気やリスクに気付きづらく、周産期(妊娠22週から出生後7日未満までの期間)の赤ちゃんの死亡率が高くなります。
妊婦健診を受けていない場合、周産期の赤ちゃんの死亡率は妊婦健診を受けている人の約6倍と言われています。
(出典:政府統計の総合窓口e-Stat、未受診や飛び込みによる出産等実態調査報告書)
また、妊婦健診を受けていない場合は、合併症に気付けなかったり感染症の検査を行えなかったりといったケースが想定されます。病院側はリスクを避けるために、妊婦健診を受けていない妊婦を受け入れ拒否する可能性があるでしょう。あらゆるリスクを避けるために、妊婦健診が必要です。
妊婦健診のスケジュールと内容

ここでは、スマイルレディースクリニックの妊婦健診のスケジュールや内容を紹介します。
検査の時期・内容は分娩予定施設により異なる場合があるため、合わせて事前確認しておきましょう。
妊娠週数 | 健診内容 | 検査 |
妊娠5〜7週 (2週間毎) | ・子宮内に妊娠しているか、胎児心拍が確認できるか | ・超音波検査 |
妊娠8〜9週 (2週間毎) | ・胎児の大きさ、心拍の有無などから分娩予定日を決定 | ・超音波検査 |
妊娠10〜12週 (2週間毎) | ・母親の血圧、尿蛋白・貧血有無、血液型 ・胎児の発育、大きさ | ・初期血液検査 (貧血/梅毒/血糖/血液型/HIV/B型肝炎/C型肝炎/風疹抗体価/ATL抗体/不規則抗体/HbA1c)・子宮頸がん検査 ・膣分泌物細菌培養 ・クラミジアPCR |
妊娠13〜19週 (4週間毎) | ・母親の血圧、尿蛋白の有無 ・胎児の発育、大きさ | ・子宮頸管長測定 |
妊娠20〜24週 (4週間毎) | ・母親の血圧、尿蛋白有無 ・胎児の発育、大きさ | |
妊娠25〜27週 (2週間毎) | ・母親の血圧、尿蛋白の有無 ・胎児の発育、大きさ | ・50g糖負荷試験 ・貧血検査 |
妊娠28〜30週 (2週間毎) | ・母親の血圧、尿蛋白・貧血有無 ・胎児の発育、大きさ | ・精密超音波検査 |
妊娠31〜32週 (2週間毎) | ・母親の血圧、尿蛋白有無 ・胎児の発育、大きさ |
スマイルレディースクリニックでは分娩施設がないため、妊娠32~34週頃の健診からお産をされる病院へ紹介状をもってお移りいただいております。
出産予定の病院の許可があれば、妊娠34週頃まで当院で妊婦健診を受けていただけます。
妊婦検診で毎回共通する基本的な検査
妊婦健診で基本的に毎回行う検査について見ていきましょう。
血圧測定
妊婦健診では、毎回血圧を測定します。血圧を測ることで、主に妊娠高血圧症候群を早期発見することが可能です。最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上が高血圧にあたります。妊娠中は、普段は高血圧とは無縁の方でも血圧が高くなりがちです。
妊娠高血圧症候群になると性器出血が起こりやすくなり、最悪の場合は胎児が子宮内で死亡してしまうことも考えられます。高血圧の傾向がある方は、医師の指示を聞いて治療しましょう。
体重測定
体重測定もお母さんと赤ちゃんの健康状態を管理するために毎回計測します。体重が増えすぎている場合は、妊娠高血圧症候群に繋がりやすくなるため注意が必要です。増えてよい体重の目安も病院で指導されるので、栄養バランスのよい食事を取り、体重の増えすぎ・痩せすぎを防ぎましょう。
尿検査
尿検査は、妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病の兆候を調べるために行います。尿中に含まれる糖分やたんぱく質、ケトン体の数値を診ることで、これらの病気を見つけられるのです。尿に糖分が多かったり蛋白が多すぎたりする場合は、さらに検査を行う場合もあります。
週数に応じた検査
毎回ではなく妊娠週数に応じて下記の検査も行います。
妊娠反応検査(尿検査)
初回の妊婦健診では、尿検査によって妊娠の有無を調べます。妊娠するとhCGと呼ばれる物質が胎盤から分泌されて尿中に含まれるため、この物質の有無を確認するのです。
ただし、hCGが検出されたとしても確実に妊娠しているとは言い切れません。異所性妊娠や流産の場合でもhCGが尿中に含まれることもあるので、エコーと合わせて妊娠の判断を行います。
超音波検査(胎嚢や胎児の大きさ・心拍の確認)
妊娠初期には、超音波検査で胎嚢と心拍を確認します。胎嚢とは、子宮の中で赤ちゃんを包む袋のことです。受精卵が着床した場所に作られ、妊娠の有無を判定する1つの要素となります。
胎嚢が確認できても心拍が確認できない場合は、流産の可能性があります。初期の流産は6人に1人の確率で起こるため、1週間に1度のペースで確認します。
その後も定期的に超音波検査を行い、胎児の大きさや心拍をチェックします。超音波検査では、子宮筋腫や卵巣の異常などお母さん側の状態も確認可能です。
超音波検査では一般的に12〜13週頃までは経膣エコー、それ以降は経腹エコーを使用します。
子宮底長・腹囲
子宮底長とは、恥骨の中央から子宮の上の端までの距離のことです。子宮底長がどれくらい大きくなっているかを計測し、胎児の大きさや羊水の量などを確認しています。
測定時は診察台に横になり、お腹を出してメジャーで測るのが一般的です。同じく腹囲の大きさを測ることでも、子宮の大きさをある程度判断できます。
子宮頸がん検査
子宮頸部を専用のヘラなどでこすって細胞を採取し、顕微鏡で観察して子宮頸がんの可能性を調べる検査(細胞診)です。
妊娠中に子宮頸がんが見つかっても、緊急性がない場合は経過観察します。
症状が進んでいてこのままにしておくと母体の命に関わると判断された場合は、手術で病巣を切り取るケースもあります。
膣分泌物細菌培養検査
膣分泌物細菌培養検査ではカンジダやB型溶連菌の感染を確認できます。
これらの症状があっても、お母さんは膣炎を起こす程度です。しかし、分娩時にカンジダやB型溶連菌が膣内にいると、赤ちゃんに感染する可能性があります。
これらの菌への感染が確認された場合は、抗真菌剤や抗生物質による治療を行います。
クラミジアPCR
クラミジアPCRは、性器クラミジアのスクリーニング検査です。
性感染症の中でも性器クラミジアは患者数が多く、妊婦さんが感染しているケースもあります。
性器クラミジアを治療しないままだと、流産や早産の引き金になったり、赤ちゃんにも感染が起こり、肺炎や結膜炎が起こったりするリスクがあります。
検査で陽性となった場合は、薬物療法による治療が必要です。
子宮頸管長測定
子宮頸管とは、膣と子宮の内側をつなぐ筒状の部分です。
子宮頸管長が短くなると早産リスクが高くなるといわれており、早産リスクの早期発見・予防のために子宮頸管長を測定します。
貧血・血糖値
血液検査で貧血かどうかを調べます。妊娠中は赤ちゃんに血液を送り届けるため、貧血になりがちです。妊婦の貧血は全体の約20%に発症するといわれています。
軽い貧血であれば問題ないケースが多いですが、重症になると出産時に出血が多くなり、産後の回復が遅れる可能性もあります。病院で鉄剤を処方されるため、医師の診察に従って服用しましょう。
また、血液検査では合わせて血糖値の計測も行います。
妊娠をするとインスリンが効きにくくなり、血糖が上昇しやすい状態になることから高血糖になる可能性があり、基準値を越えると「妊娠糖尿病」と診断されます。
50g糖負荷試験
50g糖負荷試験とは、妊娠糖尿病の早期発見のためのスクリーニング検査です。
ブドウ糖の入った検査用の飲み物を飲み、1時間後に血糖値を計測します。
この検査で血糖値が140mg/dl以上であれば妊娠糖尿病の疑いがあると判断され、より詳しい検査を行います。
内診
内診は、初期であれば子宮の大きさや形、後期であれば胎児の頭がどの程度下がっているかなどを調べます。
感染症検査
血液検査などによって、主に以下の病気の検査を行います。
- HIV
- B型・C型肝炎抗体
- HTLV-1
- トキソプラズマ
- 風疹抗体
- 梅毒
上記の病気にかかっていることが判明した場合は、胎児も感染する可能性があるため、ワクチンの接種や薬の服用などによって治療を行います。
NST(ノンストレステスト)
NSTは妊娠34週目以降に行う胎児の心拍数を調べる検査です。胎児の心拍の推移を調べ、出産に問題がないかを調べます。
胎児の元気がなくなってきている場合は早めに帝王切開を行うなど、出産の対策にも役立つ検査です。
希望者のみが行う検査
産前に胎児の様子を詳しく知りたい方のみが選択する検査についても紹介します。
精密超音波検査(胎児超音波スクリーニング検査)
精密超音波検査(胎児超音波スクリーニング検査)は、赤ちゃんに異常がないかを通常の超音波検査よりも精密に見ていく検査です。
内臓を含む全身や頭、首などの外見上や構造の異常を調べていきます。この検査により、なんらかの病気や四肢の異常が見つかる可能性があります。
全ての病気や異常を見つけられるわけではありませんが、妊娠期間中に1回は受けることをおすすめされることの多い検査です。
母体血清マーカーテスト
母体血清マーカーテストは、お母さんから採取した血液に含まれる成分を見て、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、神経管閉鎖障害(開放性神経管奇形)の可能性を調べる検査です。検査が実施できる時期は妊娠15〜18週です。検査結果は確定的ではありません。
新型出世前診断(NIPT)
新型出生前診断は、お母さんの血液を採取してDNAを調べ、胎児に21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)といった疾患の疑いが見られるかを調べる検査です。妊娠早期の10週頃から受けることができ、母体血清マーカーテストよりも検査精度が高いです。
妊婦健診にかかる費用

妊婦健診にかかる費用と、費用の抑え方を紹介します。
妊婦健診にかかる費用
妊婦健診の費用は、基本検査のみの場合は3,000円〜7,000円程度、週数によって必要な検査も受けると1〜2万円程度です。妊婦健診は14回以上受けることになるため、トータルでかかる費用は10〜15万円程度かかります。
補助券が使用可能
妊婦健診の費用は全額自己負担ですが、自治体から妊婦健診で使える補助券が発行されています。補助券で割引される金額は自治体ごとに異なるため、お住まいの地域で確認するようにしてみてください。
補助券をもらうためには、お住まいの市区町村で妊娠届を提出する必要があります。妊娠届けを提出すると母子手帳と一緒に補助券が渡されるので、妊婦健診の際に忘れずに受付に提出するようにしましょう。
妊婦健診に適した服装

妊婦健診の際には、脱ぎ着しやすい服を選ぶとよいでしょう。経膣エコー(超音波検査)や内診がある日はスカートやワンピースで行くと、下着を脱ぐだけで診察を受けられるのでおすすめです。
妊娠後期で経腹エコー検査がある日は、上下セパレートでお腹を出しやすい服装がよいでしょう。また、妊婦健診はエコー検査や体重測定などで靴を脱ぐ機会が多いので、脱ぎやすい靴がマストです。妊娠中は体を冷やさないことが大切なため、脱ぎやすさも大切ですが、お腹を冷やさないように気をつけてください。
まとめ
妊婦健診で行う内容は、毎回必ず行う検査と、週数に応じた検査があります。妊婦健診では母子ともに健康状態をチェックでき、万が一病気が見つかった場合も早めの治療が可能です。出産のリスクを避けるためにも、必ず受診しましょう。
スマイルレディースクリニックでは、妊娠初期から妊娠34週までの妊婦健診を行っています。平日は19時半まで診療しており、予約制のため長くお待ちいただくこともありません。妊娠の可能性に気がついた方は、ぜひお気軽にお越しください。