
「妊婦健診に行くお金がない」「頻繁に仕事を休めない」などといった理由で、妊婦健診に行けないと感じている人もいるかもしれません。
妊婦健診は出産までに1〜4週間の頻度で通う必要があり、費用がかかります。しかし、自治体の助成制度を利用すれば妊婦健診にかかる費用を抑えることが可能です。
お母さんと赤ちゃんの病気や出産リスクを避けるためにも必ず受診しましょう。
このコラムでは、妊婦健診に行かない場合のリスクや、妊婦健診にかかる費用などを詳しく紹介します。
「妊婦健診に行かないとどうなるの?」と考えている人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
妊婦健診とは

最初に、妊婦健診を受ける目的と初診に行くタイミングについて紹介します。
妊婦健診の目的
妊婦健診は、お母さんと胎児が健康な状態かどうかを定期的にチェックする健診です。
胎児の発育は順調か、病気がないか、お母さんは栄養が取れているか、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの病気にかかっていないかなどをチェックします。
お母さんの病気は、妊娠中でも治療が行えるものもあります。
また、胎児に発育の遅れや病気の傾向が見られた場合でも、妊婦健診で兆候が発見できれば妊娠中に治療したり、出産後すぐにNICU(新生児集中治療室)で治療を受けたりといった対処も可能です。
また、妊娠中に不安に思ったことや出産後の生活に関しての相談や指導を受けられるのも妊婦健診のメリットです。
初回受診のタイミング
妊娠がわかったら、妊娠5週目の後半から6週前半頃のタイミングで産婦人科を受診し、妊娠の有無を確認しましょう。
胎児の心拍が確認できたら、その後は妊婦健診として定期的に通院します。
妊婦健診の頻度
妊婦健診の頻度は、以下のように定められています。
妊娠初期〜妊娠23週 | 4週間に1回 |
妊娠24〜35週 | 2週間に1回 |
妊娠36〜40週 | 1週間に1回 |
妊娠41週〜 | 3日に1回、または1週間に1回 |
妊娠8週ごろに1回目の妊婦健診を受診した場合は、出産までに受ける妊婦健診の数は約14回です。
ただし、お母さんや胎児に病気の傾向が見られる場合や、治療が必要な場合などは、上記よりも頻繁に通院する必要があります。
また、早産のリスクがある場合などは、様子を見るために一定期間入院する可能性もあります。
病院の方針や妊婦さんの状況によって通院頻度は異なるため、目安として捉えるようにしてください。
妊婦検診に行かないとどうなる?

何らかの理由で妊婦健診に行かない場合、下記の3つのリスクがあります。
- 合併症にかかるリスクがある
- 周産期死亡率が上がる
- 出産する病院が見つからない
それぞれのリスクについて詳しく解説します。
合併症にかかる可能性がある
妊娠中は、さまざまな合併症にかかるリスクがあります。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの病気は、普段その病気の傾向が見られない方でもかかる可能性があるのです。
妊娠中の体の異常とは、ひどい腹痛や出血などだけではありません。病気によっては自覚症状がなく、気がついたら進行している可能性もあります。
妊娠中の病気は、お母さんだけでなく胎児にも影響し、最悪の場合は死産に繋がることもあります。
妊婦健診を受ければ病気のリスクや感染症の検査を行えるため、病気が見つかった場合でも早期に治療が可能です。
お母さんの健康のためや元気な赤ちゃんを出産するためにも、妊婦健診を必ず受診しましょう。
周産期死亡率が上がる
妊婦健診を受けないと、周産期死亡率が上がることがわかっています。周産期とは、妊娠22週〜生後7日未満の時期のことです。
妊婦健診を受けていない場合、この時期に赤ちゃんが亡くなる可能性が高くなります。
政府統計の総合窓口(e-Stat)の『人口動態調査 人口動態統計 確定数 周産期』によれば、日本の周産期死亡率は、約3.3%です。
一方大阪府が発表した妊婦健診の未受診妊婦の周産期死亡率は約19.7%で、妊婦健診を受けている人の約6倍です。
周産期に亡くなってしまった赤ちゃんの中には、妊娠中から適切な治療を受けていれば助かった例もあります。
安心・安全な出産を行うためにも、妊婦健診を受けることが大切です。
出産する病院が見つからない
妊婦健診を受けていない人は、出産する病院が見つからない可能性があります。
妊婦健診では、感染症などの検査を多数行います。これは、お母さんの治療や胎児への感染を防ぐためです。
万が一感染症にかかっている場合は、妊娠中に治療を行ったり、出産も周囲への感染リスクを下げた方法で出産する必要があります。
しかし、感染症検査をしていない場合は、出産時に医師や周囲の妊婦に感染を広げてしまう可能性があるのです。
そのため、妊婦健診を行っていない妊婦を受け入れない病院も多数あります。
破水や陣痛が起こってから病院を探そうとしても、産院が見つからない可能性があるのです。出産のリスクを防ぐためにも、妊婦健診を受けて出産場所を決めるようにしてください。
妊娠中に気をつける病気

妊娠中には、これらの病気にかかったり感染したりするリスクがあります。
上記の病気にかかると、お母さんの体調が悪くなるだけでなく、胎児の発育不良が起こったり早産や死産に繋がったりする可能性もあります。
妊婦健診ではこれらの病気の兆候の確認や検査を行っているので、必ず検診を受けましょう。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠前に糖尿病の傾向がなかった人でもかかりやすい病気です。
妊娠すると血糖値を下げる役割があるインスリンの働きが弱くなります。そのせいで血糖値が上がりやすくなってしまうのです。
妊娠中に初めて糖尿病の数値が見られる人や糖尿病のリスクが高まっている状態のことを妊娠糖尿病といいます。
食生活に関係なくかかる可能性もあり、親族に糖尿病の人がいる場合や35歳以上の人は特に注意が必要です。
妊娠糖尿病になると赤ちゃんが巨大児になったり低血糖になる可能性もあります。妊娠糖尿病の傾向が見られる際は、食事療法やインスリン注射による治療が必要です。
妊娠高血圧症候群
妊娠中に血圧が高くなり、尿に蛋白が出る状態を妊娠高血圧症候群といいます。
最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上が高血圧にあたります。
妊娠前から高血圧の方や腎臓病や肥満の方などに起こりやすいですが、妊娠前に血圧が正常だった方でもかかる可能性のある病気です。
妊娠高血圧症候群になると、性器出血が起こりやすくなり、症状が続くと出産前に胎盤がはがれる「常位胎盤早期剥離」などのリスクが高まります。
妊娠高血圧症候群は妊娠生活が終了すると症状がよくなるため、母子の状態を見て医師が慎重に出産時期を決めていきます。
風疹
風疹は、風疹ウイルスの感染によって起こる病気です。感染力の強いウイルスで、せきやくしゃみなどの飛沫で感染する恐れがあります。
妊娠20週ごろまでに風疹にかかると、胎児に感染して先天性風疹症候群になる可能性があります。
先天性風疹症候群になると、難聴・心臓病・目の病気・低出生体重・発育の恐れなどの様々な症状が起こるリスクがあります。
妊娠中は風疹の予防接種を受けられないため、妊娠前に受けておくのが理想です。
検査の結果、抗体がない・少ないと判断された場合は妊娠20週までは人ごみを避けましょう。
B型肝炎
B型肝炎は感染者との性的接触によって感染する病気です。妊婦健診では、妊娠初期に行う血液検査で感染の有無を確認します。
もしもB型肝炎に感染しているとわかった場合は、出産後すぐに赤ちゃんにワクチンを投与して感染を防ぐ治療を行います。
C型肝炎
C型肝炎はC型肝炎ウイルスによる病気です。血液経由で感染し、進行すると肝炎・肝硬変・肝がんになる恐れもあります。
感染力は強くありませんが、出産時に産道感染する可能性があるので、経膣分娩ではなく帝王切開になるケースが多いです。
梅毒
梅毒は、病原菌の感染による性感染症です。
梅毒に感染すると発疹やしこりが目立つようになり、病気が進行すると微熱や倦怠感、リンパ腫の腫れなどの全身症状が起こります。
妊娠初期に血液検査によって感染の有無が確認でき、感染していたとしても治療が可能です。
トキソプラズマ
トキソプラズマは、動物が持っている寄生虫の一種で、人に感染する恐れがあります。
大人がかかっても症状が出るケースは少ないですが、妊娠中に感染すると胎児に影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、発達の遅れや脳性麻痺、早産・死産のリスクがあるのです。妊娠初期に血液検査で感染の有無を確認します。
サイトメガロウイルス
サイトメガロウイルスは、唾液や尿に含まれるウイルスです。
妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんに感染する可能性が高くなります。
サイトメガロウイルスに感染すると、低出生体重・小頭症・発達障害などの影響が起こる可能性があります。
妊婦健診にかかる費用

妊婦健診にかかる費用と、費用を抑える方法について詳しく見ていきましょう。
妊婦健診のトータル費用
妊婦健診では、基本検査を行う場合3,000〜7,000円、週数ごとの特別な検査も行う場合には、1〜2万程度かかります。
妊婦健診は初回から出産まで14回以上受けるため、トータル費用は10〜15万円ほどかかるのです。
妊娠は病気ではないため、日本では妊婦健診の費用は全額自費負担です。
しかし、地方自治体の助成制度を活用することにより、妊婦健診にかかる費用を抑えられます。
補助券について
妊婦健診は保険適応にはなりませんが、自治体で発行される補助券を活用することによって、妊婦健診にかかる費用を軽減できます。
補助券とは、妊婦健診の会計時に使える割引券のようなものです。
補助券に書かれている金額分が妊婦健診の費用から引かれます。
市区町村に妊娠届けを提出すると母子手帳と一緒に渡されるので、妊婦健診の際は忘れずに持っていきましょう。
仕事が忙しくて妊婦健診に行けない場合の対処法

多忙な方が妊娠した場合「会社を休みにくい」という理由で妊婦健診に行けないと考えている人もいるかもしれません。
会社が休めないことが原因の場合は、通院休暇を申請するのがおすすめです。
妊娠中の女性や出産後1年未満の女性は、健診を受ける時間を確保する権利があることが男女雇用機会均等法によって定められています。
会社に申告して休暇を取得する必要はありますが、国が定めている権利のため、会社は守る必要があります。仕事が休みにくいという人は、申請方法を確認してみてください。
まとめ
妊婦健診は、お母さんと赤ちゃんの健康のために、妊娠したら必ず受ける必要があります。
また、妊婦健診に行かない場合、合併症にかかるリスクや周産期の赤ちゃんの死亡率が高くなる恐れがあります。
出産できる病院がなかなか見つからない可能性もあるため、必ず受けるようにしてください。
妊婦健診にかかる費用は自己負担ですが、地方自治体から発行されている補助券を使用することで、費用を抑えられます。
仕事が忙しくなかなか休めないという方は、通院休暇の申請を検討してみましょう。
スマイルレディースクリニックでは平日19時半まで診療を行っております。仕事帰りの人もお気軽にお越しください。